気持ちの良い冬晴れで、浅草の街が多くの観光客で賑わうなか、今年度の江戸まちたいとう芸楽祭のフィナーレを飾る「梅香る浅草、笑いの彩!~たいとう芸楽寄席~」が浅草公会堂にて開催されました。会場内は子どもから大人まで幅広い世代の多くのお客様で賑わっていました。
トップバッターとして登場したのは、前回(2024年)のビートたけし杯でグランプリを獲得したヤーレンズ。時事ネタも交えながら、テンポの良いボケとツッコミでたくさんの笑いを誘っていました。特に、旅館の女将と宿泊客に扮したネタは大爆笑でした!

続いて、登場したのは浪曲師の玉川太福さん。浅草には、木馬亭という浪曲の定席もあり、台東区との繋がりを感じながら、玉川さんのライフワークである映画「男はつらいよ」シリーズの全作浪曲化のなかから、今回は浅草にも所縁のある第20作『寅次郎頑張れ!』を披露されました。軽快な三味線(曲師:玉川みね子さん)の音色に合わせて、浪曲独特の節と啖呵を楽しみながら、観客も一体となって作品の世界に引き込まれました。


続いて、登場したのは落語家の瀧川鯉昇さん。静かな語り口で始まる独特の空気感に引き込まれながら、マクラでたくさんの笑いを誘うなか、古典落語の代表的な演目の一つである
『時そば』を改作した『蕎麦処ベートーベン』を披露されました。『時そば』とは登場人物の設定等が大きく異なりますが、巧みなリズムと軽快なやりとりは変わらず、古典落語を自由自在に操る職人芸を存分に堪能しました。

休憩を挟んで、後半戦のスタートに登場したのは音曲師の桂小すみさん。伝統的な歌曲だけでなく、ホイットニー・ヒューストンの代表曲である『I Will Always Love You』を花笠音頭と組み合わせるという独創的なパフォーマンスを披露するなど、三味線の華やかな音色と絶妙なリズムで観客を魅了しつつ、楽しい語りでも会場は大いに盛り上がりました。

そして、この日のトリを飾ったのは、上方落語を代表する落語家の一人、桂米團治さん。父親で師匠でもある桂米朝さんにまつわるエピソードなどで盛り上がるなか、上方落語を代表する古典落語の一つである『稽古屋』を披露されました。上方落語ならではの三味線や鳴り物を使う演出である「ハメモノ」がふんだんに盛り込まれており、軽妙な語りとともに三味線や鳴り物を効果的に使った臨場感たっぷりの演出をじっくり楽しませてもらいました。


今年度の江戸まちたいとう芸楽祭のフィナーレにふさわしく、大いに笑い、大いに楽しんだ、一日限りの特別な寄席となりました。これからも、この素晴らしい芸能文化が受け継がれ、より多くの人々に愛され続けることを願っています。