寄席×まちかど映画会コラボ企画

林家三平×しゃべれども しゃべれども featuring 佐藤多佳子

有料

2019年1月14日(月・祝)
寄席×まちかど映画会コラボ企画
林家三平×しゃべれども しゃべれども featuring 佐藤多佳子

和装の似合う街並み。若者たちの晴れ着姿は、浅草をより一層華やかにしているように感じられました。


まずは『しゃべれども しゃべれども』の映画上映が行われました。


上映中は、席がほぼ埋まった会場のいたる所から笑いがこぼれていました。作品中には、寄席のシーンが多く描かれており、鑑賞された皆様は作中に引き込まれるようであったに違いありません。一方で、主人公が舞台上から観客席を見やるという演者視点のシーンもありました。そこでは皆様は、今昔亭三つ葉(国分太一)に見られているような不思議な感覚に陥ったのではないでしょうか。十河五月(香里奈)、村林優(森永悠希)、湯河原太一(松重豊)という個性豊かなキャラクターが創り出す、ユーモア溢れる独特な世界観に、鑑賞された皆様は夢中になっているようでありました。上映終了後の休憩時間に、「面白かった」という声がそこここから聞こえてきました。


続いて林家三平師匠と佐藤多佳子先生が登壇され、トークショーが開催されました。それは佐藤先生の貴重なお話が、三平師匠の巧みな話術で彩られた非常に濃い時間でありました。

始めに佐藤先生から、原作となった小説「しゃべれども しゃべれども」の執筆経緯や、作品の映画化とその難しさについてのお話がありました。「落語家のお話を書きたい。」「コミュニケーション能力を上達させたい。」という二つの願いから誕生したこの作品は、落語について学びながら、長い時間をかけて執筆され、遂に映画化まで至ったそうです。それに引き続き、三平師匠がNHKラジオドラマにおいて今昔亭三つ葉を演じられた際のことが語られました。今から二十年前、林家いっ平として作品に声を吹き込んだ三平師匠。当時のご自身における境遇が三つ葉のそれと似通っており、思わず三つ葉にご自身を重ねてしまったと語られました。


 

次に、昨今の落語について三平師匠からのお話がありました。DVDや動画再生サイトによって若者に落語というものが認知されたことは、大変喜ばしいことであると三平師匠。本やそのような媒体は、後に読み返す、あるいは聴き返すことで新たな発見があるから素晴らしいと、それらが普及することの良さを熱弁されました。


 

他にも浅草、台東区にまつわるエピソードを紹介された佐藤先生と三平師匠は、最後に今後の活動について述べられました。佐藤先生は現在、新たな作品を執筆中であり、三平師匠は来る七月に夜のトリを務められるそうです。今後もお二方のご活躍からは、目が離せません。さらに、三平師匠から飛び出した、芸楽祭における新たな可能性。期待に胸を膨らませたのは、筆者だけではないでしょう。


この日のプログラムを締めくくるのは林家三平師匠による寄席です。


三平師匠は映画に登場した今昔亭三つ葉にちなみ、落語家の階級についてご自身の体験とともに語られました。前座見習いから前座、そして二ツ目を経て真打となるまでの日々についてのお話に会場からはたくさんの笑いがこぼれていました。師匠のカバンを持つ、あるいは師匠にお茶を入れる、師匠の着物をたたむ。そして自宅やカフェで自ら落語会を開催するといった下積み時代を経て真打へと成っていく、落語家の知られざる舞台裏です。また、「笑点メンバー」との逸話はどれも大変貴重であり、会場の皆様はまさにそれらを堪能されているようでありました。三平師匠のモノマネはどれもクオリティが高く、舞台上に様々な人物が登場したようでありました。林家に伝わる、いわば秘伝のお話で本日のプログラムを締めくくられた三平師匠には、会場から惜しみない拍手が送られました。


「行く先々の水に合わねば。」


本日の寄席における演目は、我々ボランティアスタッフにも知らされておりませんでした。それもそのはず、落語家の皆様は行く先々の会場の様子から、その日披露するお話を決められるそうです。三平師匠は、会場の心をまさに鷲掴みにしておられました。


レポート:芸楽祭ボランティア 頓所夕弥
写真:芸楽祭ボランティア 江頭幸宏
   芸楽祭ボランティア 鎌田俊英