まちかど映画会(台東育英小学校)

~好評 まちかど小学校シリーズ~

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2018年8月26日(日)
まちかど映画会(台東育英小学校)/ゾートロープワークショップ
~好評 まちかど小学校シリーズ~

今年の夏を象徴するかのような猛烈な暑さの中、まちかど映画会に先立ち、台東育英小学校の体育館にて開催されたのは、ワークショップ~ゾートロープ作り体験です。ゾートロープとは、等間隔にスリットをつけた円筒の内側に、連続する動きのある絵を帯状にして貼り付けたもので、その円筒を回転させてスリットから内部を覗くと、絵が動いて見えるというものです。ではなぜアニメーション映画『SING』の上映に際して、そのようなワークショップが行われたのでしょうか。その答えはゾートロープとアニメーションとの関係性にあります。


この日ワークショップに参加していただいたのは、十七人の子どもたち、そして講師を務められたのは坪井健さんです。まず参加者の方々を驚かせていたのは、とてもお洒落な衣装を身にまとわれた坪井さんの帽子です。なんと帽子がこの日作ることになっているゾートロープになっていたのです。他にも坪井さんが紹介された見本にも、子どもたちは目を輝かせていました。


ワークショップは、子どもたちが七種類の中から好きな絵、テーマを選ぶところから始まりました。その八枚一組の絵を好みの色で塗ることで、世界にひとつだけの作品になるのです。それらの絵には着色されていない人やパンダ、星といったものが描かれているだけなので、自ら物語を構想し、絵たちに息を吹き込むことで八枚の絵をひとつながりにする必要があります。子どもたちは選んだ絵を片手に、坪井さんに積極的に質問をしていました。そこには作品を少しでもよくしようという意気込みを見て取ることができました。


坪井さんより、主人公やキャラクターははっきりとした色を、マーカーなどを用いて塗り、反対に背景は軽めの色を、色鉛筆などを用いて塗ることで作品がより見やすくなるという助言を得た子どもたち。黙々と真剣に作業に取り組む方もいれば、近い席の方や保護者の方と相談をしながら作業を進める方もいました。また絵を次々に着色し、オリジナルのキャラクターまでをも描き込む方がいた一方で、丁寧に縁取りをしてから少しずつ塗っていく方もいました。ワークショップを拝見することで、そうした「個性」を垣間見ることができました。


会場は四名から七名で一つのテーブルにおいてグループになっておりました。そのため複数人の子どもたちでペンなどの道具をシェアしつつ、作業を進めていく必要があったのです。学校の授業とは異なり、中には初対面の方や歳の離れた方同士でそれらを譲り合うこともあったため、余計に気を使わなければならなかったかと思われますが、どのグループもそのような環境の中でうまくゾートロープの作成に取り組んでいました。


絵一枚に一文字ずつ書き込み、自らの名前を取り入れている方や、坪井さんが「面白い!」と評された、月が星を食べる物語を描き込まれた方など、まさに十人十色の絵が次第に完成へと近づいていきます。作業開始時には同じモノクロの絵であったにもかかわらず、全く異なる展開を見せる様子には、非常に興味深いものがありました。また完成しても、坪井さんからの助言を受け、作品に磨きをかけようと再びペンをとる方もおられ、子どもたちの向上心を肌で感じることができました。


そうして絵を描き終えると、今度はそれをハサミで切り、ゾートロープの形へと仕上げていくという作業が待っていました。複雑な形にカットしなければならず、かなり細かいところにクオリティが求められるような根気のいる工程でしたが、子どもたちは真剣な眼差しでハサミを動かしていました。特にきれいなスリットを入れることはとても難しそうでありました。


このようにして作成したため、達成感も一際大きかったのだと思われます。子どもたちは完成した作品をお互いに見せ合う、あるいは作品と一緒に写真を撮るなどして完成を大変喜んでいる様子でした。さらにその後、参加者の皆様は道具の後片づけまでしっかりとしてくださいました。「ゾートロープがすごかった」「自分の思い通りにできた」といった感想をくださった方もおられ、今回のワークショップが素晴らしいものであったと感じられました。開始時より、終始作業を拝見した筆者は、特に子どもたちの物語を創造する力に驚かされました。ゾートロープは円になっているため、最後の一枚が終わると最初に帰るのですが、そのつなぎ目の部分は特に難しいと思われます。それにもかかわらず、四十分から五十分で物語を構想し、その通りに色を塗り、背景やキャラクターを描き込むというのは豊かな想像力があってこそ、成せるのだろうと強く感じました。


ワークショップ終了後、映画『SING』の上映が始まるまでの間「台東くん 上野パンダバージョン」が登場しました。その愛くるしさに抱き付く、あるいは握手をするなどして触れ合う子どもたちに、会場は微笑ましい雰囲気に包まれました。


『SING』そのタイトルの如く歌をテーマにした映画に、リズムをとりながら鑑賞される方もおられました。35℃を超える猛暑の中、クーラーの効いた体育館で観る映画は格別であったことでしょう。一人で真剣にスクリーンを見つめる方や、複数人で肩を並べて鑑賞する方々、さらにはお子様を連れ、夫婦で寄り添いながら観られる方もおられました。前列のマットが敷かれた席には寝そべって鑑賞するお子様もおられ、映画館で観る映画とは違った趣があると感じました。また映画には多くの動物が登場したため、その種類の豊富さを楽しむお子様や、動物たちの愉快な掛け合いに笑いをこぼす観客の方も多くおられました。上映終了後には「面白かったね」と話して帰られる親子や、「もう一回観たい!」とおっしゃるお子様もおられ、台東育英小学校の体育館は、非常に温かい雰囲気に包まれました。


地元にはまちかど映画会のような文化がなかった筆者には、そうした光景が非常にうらやましく思えました。こうした取り組みが生活の一部となっておられる区民の方々を拝見し、台東区がまさに芸能の街であるということを再認識することができました。


一枚一枚の絵をつなげ、それらを回転させつつ、スリットから覗き見ることで生命を吹き込むゾートロープ。無数のコマをつなげ、キャラクターを躍動させるアニメーション。今日、日本を代表する文化の一つとも言えるアニメーションの祖先と言われているゾートロープのワークショップを、アニメーション映画『SING』の前に開催することには、そのような意味があったのです。

レポート:芸楽祭ボランティア 頓所夕弥
写真:台東区